悪者説は間違い!
鶏卵とコレステロールのほんとうのお話
みなさんこんにちは!(^^)!
今回は、ビオサポ学習会で質問の多かった鶏卵とコレステロールについて書きたいと思います。
コレステロールが、卵に多く含まれていることはみなさんご存じだと思います。
「卵はコレステロールが高いので、メタボリックシンドロームが気になる人は食べない方が良い」と思っていませんか?
実は、卵のコレステロールについて、最新の栄養学では考え方が見直されてきています。
そもそもコレステロールとは何か??
コレステロールとは脂質の一種です。
私たちの体は約60兆個の細胞から成り立っていますが、コレステロールはそのすべての細胞膜の構成成分です。
細胞は、毎日死んでは新しく入れ替わるということを繰り返しをしています。
コレステロールは新しい細胞をつくるために必要な成分なのでいつも血液の中に一定濃度含まれています。
食べてもエネルギーとして利用されなかった脂質や糖質が人体に蓄積された「中性脂肪」とコレステロールはまったく違うものなのですが、テレビや雑誌の宣伝などで「コレステロールゼロの○○です」などと謳って、肥満防止のイメージで売り込まれる商品が多いので、なんとなくコレステロール=中性脂肪=ダイエットの敵というようなイメージが定着してしまったのだと思います。
また、コレステロールは、胆汁酸の原料にもなります。
胆汁酸は脂質の吸収を助ける働きがありますが、胆汁酸が不足すると、ビタミンD・A・K・Eなどの脂溶性ビタミンの吸収も悪くなります。
コレステロールはもともと「悪者」では無いのですよ(*^_^*)
実はこのコレステロールは、私たちの体内で毎日合成されています。
コレステロールには「体内で合成されるコレステロール」と、「食品から摂るコレステロール」があり、人体にあるコレステロールの約7割が、体内で合成されたコレステロールです。鶏卵やイカやタコはコレステロールが多いといわれますが、食品から摂取するコレステロールは意外に少ないのです。
私は学習会でも、鶏卵のコレステロールは血中に多くは反映されないので、決して悪者ではないというお話をさせていただいているのですが、約7割ものコレステロールが、食材からではなく、もともと人体で合成されているということを、初めて知ったと言ってくださる方が多いです。
コレステロール摂取量が少ない場合、肝臓はコレステロールの合成を増加させ、逆に摂取量が多い場合は、肝臓でのコレステロールの合成を減らします。このようにして体の中でコレステロール量は常に一定に保たれています。食品からのコレステロール摂取量が、そのまま直接血中総コレステロール値に反映されるわけではありません。
さて、ここからが本題です。
厚生労働省は5年に1回、私たち日本人の食事に関して、栄養学的な側面からの基準である『日本人の食事摂取基準』を発表しています。
私たち管理栄養士は、この『日本人の食事摂取基準』をもとに栄養指導を行っています。
前回の基準は2010年に公表されたものですが、今年の4月に『日本人の食事摂取基準2015』が発表されました。
今回の『日本人の食事摂取基準2015』は、卵のコレステロールを悪者とする誤った情報の氾濫に対して警告しています。
まず、鶏卵のコレステロールに関して、各種の研究論文を引用し、卵の摂取量と冠動脈疾患や脳卒中の死亡率、糖尿病有病率との関連はなく、1 日に卵を2 個以上摂取した群とほとんど摂取しない群との死亡率を比べても有意な差は認められていないとして記載しています。また、『日本人の食事摂取基準2010』で1日成人600mg(上限)とされていたコレステロール摂取目標量も取り下げられました。
あわせて「コレステロールは動物性たんぱく質が多く含まれる食品に含まれるため、コレステロール摂取量を制限するとたんぱく質不足を生じ、特に高齢者において低栄養を生じる可能性があるので注意が必要である」と注意喚起を行うに至っています。
「卵はコレステロールが高く、高コレステロール血症になるので食べない方が良い」という考え方は見直されてきています。
特に現代では、高齢の方にたんぱく質不足が多く見られます。
たんぱく質が不足すると感染症への抵抗力が落ちたり、精神的にも気持ちが落ち込むなど、いろいろな弊害が出ることが知られています。
鶏卵は栄養の缶詰といわれるほどビタミン(ビタミンC以外)やミネラルがバランスよく含まれ、安価で良質なたんぱく源です。
コレステロール制限、たんぱく質制限に関しては、医師による鶏卵などの摂取制限指示のある場合は、その指示に従うことが原則です。
でも、健康な方が、やみくもに鶏卵を問題視することは適切ではありません。特に医師からの制限がない、健康な人であれば卵は1日1個は食べたい食品です(^^)
卵の品質は鶏の食べる餌に大きく影響されます。生活クラブの鶏卵は餌や飼い方も生産者と組合員が話し合い公開を前提に決められています。飼料には遺伝子組み換え作物も使っていません。
鶏種も国産鶏。
いくら栄養価が高いといっても、鶏卵そのものに不安があるものを選ばないようにしたいですよね。
今日のビオサポだよりの内容は少し専門的になってしまいましたがみなさんの生活に役立つ内容になっていたら嬉しいです(*^^)v
(参考)
日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書.Ⅱ各論.脂質