鶏ハムやローストビーフ… 人気の低温調理、自己流は食中毒のリスクも!?
<目次>
・肉を加熱して食べる必要性と低温調理が普及した理由
・食中毒を防ぎ、安全に食べるために注意したいこと
-加熱温度と時間の条件
-低温調理は思ったより時間がかかる
-余熱調理は加熱が不足しがち
-見た目では十分加熱できたかわからない
-正しいレシピで調理を
・お肉をやわらかく食べる工夫いろいろ
・食中毒を予防してお肉をおいしく食べよう
肉を加熱して食べる意味と低温調理が普及した理由
肉を加熱して食べる理由には、大きく分けて「衛生のため」と「おいしさのため」の2つがあります。生の肉には、食中毒の原因となる細菌やウィルス、寄生虫がついていることがありますが、加熱することによってこれらを減らして安全に食べることができます。また、加熱によって食感や風味が変化してよりおいしく食べられるようになるのも理由のひとつです。
一方で、加熱の温度や時間によっては、肉のたんぱく質が急激に収縮し保水性も低下して、肉のやわらかさが失われ、かたくなってしまうこともあります。
その点、低温調理は、肉の急激な収縮を防ぎしっとりやわらかく仕上げることができるので重宝されています。外食産業では実用化されており、最近では家庭用のさまざまな種類の低温調理器も販売されています。しかし、家庭で低温調理を行なう場合は注意が必要です。
食中毒を防ぎ安全に食べるために注意したいこと
お肉を安全に食べるための調理の条件とは? さまざまな注意点があります。■加熱温度と時間の条件
肉の中心温度が75℃になってから1分間の加熱が必要です。
70℃なら3分間、63℃なら30分間の加熱が必要。63℃未満での調理はできません。
| 中心温度 | 温度維持必要時間 |
|---|---|
| 75℃ | 1分 |
| 70℃ | 3分 |
| 63℃ | 30分 |
いずれも、加熱し始めてからの時間ではなく、肉の「中心」がその温度になってからの時間であることに注意!
■低温調理は思ったより時間がかかる
例えば食品安全委員会で紹介されている事例(*1)を見てみましょう。鍋内の水温を一定に保つことができる低温調理器を使い、鶏ムネ肉(約300g・厚さ約3cm)をジッパー付き袋に入れて加熱した例です。
●元々の温度が14~22℃の鶏肉を、63℃のお湯に入れ63℃を保って加熱した場合、肉の内部温度が63℃になるのには平均して68分かかりました。
●しっかりと加熱殺菌するには、63℃加熱の場合ここからさらに30分間の加熱を維持する必要があります。
●つまり、この鶏ムネ肉を63℃で低温調理する場合には、肉の温度が上がるまでに平均68分、さらに30分間温度を維持する必要があり、調理に計100分ほどの時間を要します。
温度や肉の量によって変わりますが、低温調理には長い時間がかかるのです。
(*1 https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/shokuhniku_teionchouri.html)
■余熱調理は加熱が不足しがち
SNSなどで紹介されている低温調理の中には、余熱を利用するレシピが見られます。かたまり肉の表面を焼いた後にアルミホイルで包む、ジッパー付き袋に入れた肉を湯につけっぱなしにするなどの方法をすすめるものです。ただ、上記の例でわかるように、低温でしっかりと加熱殺菌するには、内部の温度が上がってから、かなり長い時間その温度を維持する必要があります。余熱を利用するレシピでは、中心温度がしっかり上がりきらない場合もあるので注意が必要です。

■見た目では十分加熱できたかわからない
食品安全委員会HPで紹介されている事例では、肉の内部温度が63℃になってから30分間加熱した鶏肉と、内部温度が63℃に達したばかりの加熱不十分な状態の鶏肉では、断面の外観はほぼ同じで、見分けはつきません。肉の色を見ても、十分に加熱されているかどうかは全くわからないのです。

■正しいレシピで調理を
どうしても家庭で低温調理をしたい場合は、食中毒のリスクを避けるため、前述の加熱条件を満たしたレシピ、調理時の条件を明記したレシピを参考にしましょう。
例えば下記のビオサポレシピのローストビーフは、調理時の条件が細かく明記されています。もし室温や肉の重量などがこの条件と異なる場合は、加熱不足となるリスクを避けるため、調理用温度計で肉の中心温度を測るなどしましょう。
北海道チクレン直伝!ローストビーフのつくり方
お肉をやわらかく食べる工夫いろいろ
食べ物についた細菌やウイルスなどが原因となる食中毒は、1年を通じて発生しています。不安がある場合はしっかりとした加熱調理を選ぶことも大切です。
低温調理以外にも、肉をやわらかく仕上げる方法はいろいろ。
・切り方を工夫する…調理した肉を切るときに、筋繊維に対して直角に、繊維を断つように切る。

・煮込み調理にする…弱火で長時間煮込むと、肉のすじなどのかたい部分もやわらかくなります。

・マリネ液に漬ける…肉の1%以下の塩、食酢、油の混合液に漬けておくと、肉のpH値が酸性に傾いてやわらかくなります。

・酵素を利用する…野菜や果物に含まれるたんぱく質分解酵素に、肉をやわらかくする作用があります。パイナップルやキウイ、梨といった果物をすりおろしてお肉を漬け込んだり、玉ねぎのすりおろし、しょうがのしぼり汁を使ったりするのもよいですね。

低温調理ではなくてもお肉をやわらかくおいしく食べられるレシピを、ビオレポレシピからいくつか紹介します。ぜひ試してみてください。
●蒸し鶏のはちみつマヨカルパッチョ
調味液に漬けた鶏肉はしっとりとした仕上がりに。
●焼いて作るよだれ鶏
酒を加えて蒸し焼きにする工程で、できあがりふっくら。
●牛スネ肉の韓国風スープ
じっくり煮込んだ牛肉のやわらかさが楽しめます。
低温調理済みの惣菜を利用するのも手軽でおすすめです。以下は生活クラブで取り扱う2品です。
サラダチキン・スライス(プレーン)

純国産鶏種の丹精國鶏のムネ肉を使用。冷凍で便利です。
ローストビーフ(タレ付き)

北海道で健康に育ったキタノチカラウシの赤身肉を堪能できます。タレもおいしいと組合員に評判です。
食中毒を予防してお肉をおいしく食べよう
特に梅雨時から夏場にかけては、細菌性の食中毒に注意したい時期。特に食肉について注意したいポイントを確認しましょう。食中毒予防の基本は、菌を「つけない・増やさない・やっつける」です。
■つけない(細菌を食べものにつけない)…肉は最後に切ったり触ったりし、調理器具や手はその都度洗う。
■増やさない(食べものについた細菌を増やさない)…生肉を常温で放置しない、作ったら早めに食べる。すぐに食べない場合は素早く温度を下げて冷蔵する。
■やっつける(細菌を加熱してやっつける)…温度計を活用して中心温度を確認する、無理に低温調理にこだわらない。
家庭での低温調理は、温度管理がかなり難しいのが実情。行なう場合は細心の注意を払うことはもちろんですが、低温調理にこだわらず、いろいろな方法でお肉をおいしく安全に楽しみましょう。

【参考】
●内閣府食品安全委員会「肉を低温で安全においしく調理するコツをお教えします!」
https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/shokuhniku_teionchouri.html
●「NEW調理と理論第二版」(同文書院)