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きちんと知って食べたい! お肉の「栄養」と「生産」のこと

食品を選ぶとき、「植物性だからヘルシー」という推し文句をよく聞くことがありますよね。その背景には、飽食とも言われるほど豊かな食生活の中で、脂質の摂取量が次第に増え、生活習慣病のリスクが高い人の割合が増えているという状況があります。では、植物性ではない食品はヘルシーではないのでしょうか? お肉は健康的でないから食べない方がよいということ? そんな疑問も浮かんできます。そこで今回は、お肉の栄養とその生産のことについて、あらためて考えてみたいと思います。
 

脂質には欠かせない役割も

このビオサポコラムでも繰り返し取り上げてきた話ですが、健康的な食生活の基本となるのは、さまざまな食べ物をバランスよく食べること。穀物、肉、魚、豆類や野菜、果物、乳製品など、偏ることなくいろいろな食品を摂ることがとても大事です。

脂質は健康への影響を問題視されがちですが、体の中では細胞膜の主要な構成成分となっています。また脂溶性ビタミンやカロテノイドの吸収を助けたり、ホルモンの材料となったりするなど、欠かせない役割をもっています。

動物性の脂質に多く含まれる飽和脂肪酸はコレステロール値との関係が指摘されていて、肉が健康によくないと言われる要因となっています。しかし、日本人を対象とする調査では、飽和脂肪酸を極度に制限することは、脳内出血の発症と関連する可能性があるともされているのです。脂質は、極端に減らすことなく、適度に摂ることが必要だということですね。
 

牛・豚・鶏にはそれぞれに違った栄養が

肉の脂質以外の栄養にも注目してみましょう。肉は良質なたんぱく質の供給源であるとともに、さまざまなビタミンやミネラルなどの栄養素も含みます。

牛肉には鉄や亜鉛、ビタミンB12が、豚肉には糖質の代謝を助けるビタミンB1が、鶏肉にはビタミンAやビタミンKが多く含まれるなど、それぞれ異なる特徴があります。つまり、いろいろな肉を食べることで、多様な栄養素を摂ることができるというわけです。また、血液をつくる働きのあるビタミンB12は植物性食品にはほとんど含まれていないため、肉などの動物性の食品を食生活に取り入れて、欠乏しないように注意することが必要です。
牛・豚・鶏

肉と野菜、どちらもバランスよく

植物性の食品、主に穀物や野菜や豆類は、食物繊維が多く含まれるほか、さまざまなビタミンやミネラルの供給源となっています。抗酸化作用をもつ成分の供給源となることも期待されます。

動物性の食品、植物性の食品、それぞれに異なる特徴をもっています。食生活のバランスのためには、肉を植物性のものに置き換えるのではなく、肉、魚、卵、乳製品など動物性の食品をしっかり摂りながら、穀物や野菜や豆類も充分に取り入れることが大切なんですね。
 

食べ物を選ぶときに大切なもうひとつの視点

食べ物を選ぶ視点は、栄養面だけではありません。「その食べ物がどのように生産されたものか」を考えることも、実はとても大切です。日常的に食べるものが、社会のサステイナビリティを脅かすことにつながっていないかどうか?と考える視点です。私たち自身が食べるものと、社会の持続可能性、その双方が両立するものであるように、生活クラブでは生産のしくみについても常に検討を重ねています。

例えば同じ肉類でも、生産者によって飼料や飼育の方法は違います。食べ物そのものだけでなくその背景にある産地にも目を向け、生産の過程も含めて食べ物を選ぶ、ということを私たちがしていく必要があります。「肉かそれ以外か」という視点だけでなく、「どんなふうに生産された肉を選んで食べるか」という視点も持ちたいですね。


 

生産の背後にある飼料の国内自給への取組み

現在の国内の畜産業では飼料の自給率が25%と低く、多くを輸入に頼っています。輸入に頼るということは、私たちの日々食べるものの価格が、国際的な飼料価格の変動の影響を受けて不安定になってしまうことを意味します。それだけでなく、輸送にかかるエネルギーとそれに伴うCO2排出の問題や、遺伝子組み換え作物の問題などもあります。

この状況に対して生活クラブでは、飼料を輸入に頼る生産構造の転換をめざして、さまざまな施策を行なっています。国産の飼料用米や子実トウモロコシ、牛用の飼料作物(乾草やサイレージ用作物)、副原料となる油脂原料や穀物原料の粕類など、生産者や関係者などと連携・協議しながら、畜産飼料の自給力を高める取組みを続けています。
 

健康な動物を育てるという視点も大切

動物の健康という面からも、飼料はとても大切です。多くを輸入に頼る現状では、飼料は穀物を中心としたものになりますが、輸入穀物の多くは遺伝子組み換え作物であり、ポストハーベスト農薬の心配もあります。動物の健康への影響が懸念されると同時に、環境への負荷もはかり知れません。

穀物飼料はエネルギーやたんぱく質が豊富で養分吸収が高いという特徴があり、一方で牛は草食動物なので、牛本来の生理に合うよう、生活クラブでは国産牧草の給餌率を上げる取組みもすすめています。


 

国内の畜産と農業の連携で「食」を守ることに貢献

生活クラブでは、国内の畜産と農業との連携にも積極的に取り組んでいます。現在農業も、国際情勢によって輸入肥料の価格が高騰し、大きな影響を受けています。畜産と農業が連携することによって、飼料と、畜産から出るたい肥を相互に循環させることができます。こうした取組みは、環境を守ることと国産の食料を守ること、その両方に貢献します。そして巡り巡って、私たちの日々の「食」の安定にも、産地での生産者の暮らしを維持し地域経済を持続させることにもつながっているのです。
 

栄養の役割と生産の背景を理解して食べていこう

いかがでしたか? ここまで、お肉のことについていろいろ探ってきました。栄養面では、肉はたんぱく質だけではなく、ビタミンやミネラルなどさまざまな栄養素の供給源です。そして肉の生産の背景には、社会情勢や食の未来につながる要素があることもわかりました。こうした視点を持って食べ物を選んでいくことが、私たちの健康のためにも持続可能な社会を支えていくためにも、大切なことだと思います。


【参考】
●「日本人の栄養と健康の変遷」厚生労働省健康局健康課栄養指導室(2022年2月発行)
https://www.mhlw.go.jp/content/000894080.pdf

●農林水産省HP「知ってる?日本の食料事情」その4お肉の自給率
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-04.html
 

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