高カロリーだからって敬遠しないで!体にも環境にもうれしい油の選び方
世界的に油の価格が上がっている!?
最近、食品の価格が上がっていることを実感する場面が増えていますね。その中でも大きく上昇しているのが、食用植物油の価格です。農林水産省の調査によると、令和4年9月においては平年と比べて55%も上がっているのだそう! 日本は食料自給率が諸外国に比べても非常に低いのですが、植物油脂の自給率は約4.3%とのことです。特に、生産量が一番多いなたね油の原料である「なたね」は、国産原料の割合が約0.12%という低さ。油は私たちの生活になくてはならない食品ですが、実はこのように輸入に大きく頼っています。食品の価格の近ごろの高騰は、輸入に頼る私たちの食卓が世界の動向の影響を直接的に受けていることを感じさせますね。脂質は健康に欠かせない栄養素
「油」というと「カロリーが高くて太る」と目の敵にされがちですが、油(脂質)は生きるためには欠かせない栄養素。あらためて油脂の働きについて考えてみましょう。私たちは食べ物からエネルギーを得ていますが、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、そのうち脂質が占める割合は20~30%程度が望ましいとされています。脂質は炭水化物やたんぱく質に比べて重量あたりのエネルギー量が多いため、少量で多くのエネルギー源となります。エネルギー源として使われなかった分は体に脂肪として蓄えられ、貯蔵エネルギーとして体温の維持のために使われたり、外部からの衝撃から体を守る働きをしたりします。脂質は体内でエネルギー源となるほか、細胞膜を作っているのも主にこの脂質です。脂溶性のビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど)やカロテノイドの吸収を助ける働きもあるので、私たちの体のあらゆる組織の健康のために欠かせない栄養素なんです。
油の脂肪酸バランスにも注目してみよう
油の主な成分は脂肪酸。この脂肪酸は、大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。バターやラードなど常温で固まる、主に肉や乳製品などの脂肪に含まれるのが飽和脂肪酸。そして、植物や魚の脂に多く含まれるのが不飽和脂肪酸です。この不飽和脂肪酸は、さらに一価と多価に分けられ、多価不飽和脂肪酸の中に「n-3系」と「n-6系」があります。この多価不飽和脂肪酸は、人間の体内でつくり出せず食べ物から摂らなければいけない「必須脂肪酸」にあたります。n-3系脂肪酸は、α-リノレン酸や、DHA、EPAなど。n-6系脂肪酸は、リノール酸などです。
冒頭で触れたように、私たちが調理で使う食用植物油にはいくつかの種類がありますが、それぞれ脂肪酸の種類と割合が違い、油の性質を特徴づけています。例えば、なたね油、大豆油、コーン油、オリーブ油、ごま油の脂肪酸組成はこのように違います。
【主要な食用植物油の脂肪酸組成】
この中でなたね油は、摂りすぎに注意が必要な飽和脂肪酸が少なく、必須脂肪酸である「n-3系脂肪酸」を多く含みます。また、「n-6系脂肪酸」の割合が大豆油やコーン油に比べて低いという特徴があります。さらに「悪玉コレステロール値を上げない」とされるオレイン酸も豊富。なたね油は脂肪酸バランスのよい油と言えます。
調理でも大切な役割をする油
体内での働きやおいしさに加えて、油は調理においても油にしかない効果を発揮しています。水は100℃で沸騰し蒸発してしまいますが、油はもっと高温での調理が可能です。揚げ物が、表面はさっくり、内側はしっとりと仕上がるのは、高温の油によって短時間で加熱ができるため。そして表面の水分を短時間で蒸発させることによって、サクサクした食感も生み出します。炒め物も、油を使って短時間で加熱することで材料の食感や香りを活かすことができるのです。肉などの食材を焼くときにフライパンに引いて、くっつかないようにする役割もあります。クッキーやビスケットにサクサクの食感を与えたり、料理に風味を加えたり、口あたりをやわらかくしたり、油は調理の過程でさまざまな効果を発揮しています。
原料や製法をよく調べて選びたい
油は、植物などからつくられる加工品なので、原料や加工法について知ることも大事です。国内の需要と生産量ともにもっとも多いなたね油を例にとると、原料となるなたねは国内自給率が低く、多くを輸入に頼っています。しかも、日本が輸入するなたねの主産地であるカナダでは、遺伝子組み換えなたねが栽培のほとんどを占めるのが実情。生活クラブで取り扱うなたね油は、希少な国産なたねと、オーストラリア産の遺伝子組み換えでないなたねを原料としています。生産者と直接話しあって約束することで、国内・国外の両方で遺伝子組み換えでないなたねを原料とすることができています。また、生産者である米澤製油(株)では、圧搾・精製の過程で、一般的な植物油の製造工程で使用される化学合成薬品を一切使わない製法をとり、シリコーンなどの添加物も一切使っていません。
ひと口に「なたね油」と言っても、このように原料や製法には幅があるので、そこに注目することも大切ですね。
品質を考えるなら容器にも配慮を
植物油の多くを占める多価不飽和脂肪酸は、酸化しやすい性質があります。油の色が濃くなったり、においが出てきたり、粘度が増したりするのが酸化です。油の酸化は光や熱に触れることで促進されるので、保管には光を遮るなどの配慮が欲しいもの。生活クラブの油は缶の容器を使用していますが、それはプラスチック原料削減策であるとともに、遮光により酸化を抑えるためでもあるのです。油については、こうした容器のことも気にしたいポイントです。どんな油を選ぶかは未来にもつながっていく
いかがですか? こうして考えると油って、健康のうえでも、食事を楽しむうえでも、とても大切で欠かせないものだと実感できますね。油の価格が高騰している昨今の状況を見ると、グローバルな動きに私たちの暮らしが翻弄されていることを感じざるを得ません。油という、暮らしに欠かせない大事な品目で、原料の国産率を高め遺伝子組み換えでない原料の使用を守ってきた生活クラブ。これまで続けてきたその取組みを、食べることで引き続き守っていき、未来へとつなげていきたいですね。最後にビオサポレシピから、生活クラブのなたね油をおいしく活用できるレシピを紹介します。ぜひ試してみてください!
■なたね油の玉ねぎドレッシング
■なたね油で簡単和風ドレッシングサラダ
■なたね油でシンプルトマトパスタ
■なたね油で作るフルーツタルト
【参考】
●食品価格動向調査 農林水産省HP
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/kouri/gaiyou.html
●油糧生産実績調査(令和3年確報版)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/oil/
●世界の食糧自給率 農林水産省HP
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html
●「日本人の食事摂取基準(2020版)」
●「NEW調理と理論第二版」(同文書院)
●「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」