あなたは足りてる? もっと摂りたい食物繊維は食事から!
トクホの中でも多い関与成分が「食物繊維」
健康食品の中で、よく宣伝されているのが「トクホ」。「特定保健用食品」のことで、消費者庁の個別の審査許可を受けて販売されているものです。これまでに千点を超える製品がトクホとして許可され販売されてきましたが、中でも約3分の1を占めるのが、食物繊維の「難消化性デキストリン」をその効果の関与成分としたものです。表示できる効果として「おなかの調子を整えて便通を改善します」「糖の吸収をおだやかにするので、食後の血糖値が気になる方に適しています」「脂肪の吸収を抑えて排出を増加させます」「血中中性脂肪が気になる方の食生活の改善に役立ちます」などをうたっています。難消化性デキストリ
そもそも難消化性デキストリンとはどんなものなのでしょうか? これは、トウモロコシでん粉に微量の塩酸を加えて加熱し、酵素による分解を行なった後に精製し、食物繊維を取り出したもの。水に溶けやすく、臭味がなく、わずかな甘味をもち、粘性が低いという特徴があります。食品の性状への影響が少ないために、お茶を含む清涼飲料水、インスタントのスープやみそ汁、菓子などさまざまな製品に多く利用されているんですね。 ンとは食物繊維のさまざまな働き
食物繊維は、炭水化物のうち、人の消化酵素で消化できないもののことです。その有用な働きが注目され、「第6の栄養素」なんていわれることもありますよね。食物繊維は、便秘の予防をはじめとする整腸効果があるだけでなく、脂質・糖・ナトリウムなどを吸着して身体の外に排出する働きがあるため、これらを摂り過ぎることによって引き起こされる肥満や脂質異常症(高脂血症)・糖尿病・高血圧など生活習慣病の予防・改善にも効果が期待できます。不足気味なので積極的に摂りたい
食物繊維は、現在、ほとんどの日本人に不足している食品成分。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、食物繊維を積極的に摂取することが勧められ、摂取目標量は男性18~64歳は一日に21g以上、65歳以上は20g以上、女性18~64歳は一日に18g以上、65歳以上は17g以上とされています。実はこの目標値も、現在摂取できている量が少ないために、より実施しやすい目標として定められたものなんだそうです。つまり“これだけ摂れば安心できる”というものではなく、生活習慣病の予防のためにはより多くの摂取を心がけたいところです。普段の食事では何から食物繊維を摂っている?
「令和元年国民健康・栄養調査」によると、食物繊維の摂取量の平均値は18.4g。そのうち最も大きな摂取源となっていたのは穀類で6.6g。食物繊維摂取量全体のおよそ3分の1にあたります。穀類の中では米が最も多いそうです。穀類に次いで野菜類、いも類、豆類と果実類という結果でした。私たちにとって主食はエネルギーとなる炭水化物の摂取源ですが、同時に食物繊維の大きな摂取源でもあることがわかります。精白米のご飯に含まれる食物繊維の量は、100gあたり1.5g。他の食品の100gあたりの食物繊維量(例:さつまいも(皮つき・蒸し)3.8g、こんにゃく3.0g、大豆(ゆで)8.5gなど)に比べると、それほど多くないと感じるかもしれません。でも精白米のご飯普通盛り(150g)を1日に3杯食べると計6.75gの食物繊維を摂れるので、そう考えると意外と多いですよね。私たちは、食事全体の中で食べる量の多いご飯から、多くの食物繊維を摂取しているというわけです。
主食から、食物繊維と同時にビタミン・ミネラルも摂取
エネルギー源であり、食物繊維の摂取源でもある炭水化物。1日にどれぐらい摂るのがよいのでしょう。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、炭水化物の1日の摂取目標量は、1日に食事から摂取するエネルギーの50~65%としています。ただし、炭水化物の中でも、精製度の高い穀類や甘味料や甘味飲料、酒類が多い食事になってしまうのはよくありません。こうした食事は、ビタミン類やミネラル類の摂取不足につながる恐れもあり、血糖値も中性脂肪も上がりやすくなります。たとえ「食後の血糖値が気になる」人に効果があるとされる食物繊維入りのトクホ製品を摂ったとしても、このような食生活をしながらでは、その効果は限られたものになると考えられます。また、食品から摂取できる食物繊維の量を超えてサプリメントから大量の食物繊維を摂取したとしても、それが有効だとも言えないのです。
血糖値や中性脂肪の数値が気になる場合には、まず食生活そのものを見直すことが大切です。主食をしっかりと食べ、甘味料や甘味飲料、酒類が多すぎない食事をすることが、食物繊維や、ビタミン類、ミネラル類の摂取につながります。
食物繊維を摂るなら日本型食生活がおすすめ
穀物に次ぐ食物繊維の摂取源は、野菜類、いも類、豆類、果物です。これらを食事から多く摂ろうと思うなら、日本型食生活がおすすめ。主食のご飯に、野菜やいも、豆、海藻など食物繊維が豊富な食材でつくるおかずがよく合います。さらにご飯を炊くときに、胚芽精米や玄米にしたり、雑穀や豆などを混ぜたりすれば、食物繊維をより多く摂取できるのでいいですね。特別に新しい料理をつくらなくても、定番のおかずに季節の野菜を取り入れれば、食物繊維の多い料理のバリエーションが増えます。食物繊維がたっぷり摂れる、ご飯が主食の日本型食生活をぜひ見直してみましょう。ビオサポレシピサイトから、食物繊維が豊富な食材を使った料理をいくつかピックアップしてみました。根菜を中心とした野菜のおかずやみそ汁は普段の献立にぴったりですね。切り干し大根、ひじき、きくらげといった乾物も食物繊維を摂りやすい食材です。主食のご飯と組み合わせて、こうした料理をぜひ食卓に取り入れてみてください。
■牛肉とごぼうのさっぱり炒め
■鶏手羽元で筑前煮
■野菜たっぷりみそ汁
■わかめと切り干し大根のサラダ
■ひじきのトマト煮
■きくらげとトマトの和風卵炒め
【参考】
●日本経済新聞(2023/4/14)「矢野経済研究所、健康食品市場に関する調査結果を発表」
https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP653267_U3A410C2000000/
●「健康食品」の安全性・有効性情報_国立研究開発法人_医薬基盤・健康・栄養研究所
https://hfnet.nibiohn.go.jp/specific-health-food/
●「多糖類としての難消化デキストリンの特徴」独立行政法人農畜産業振興機構
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001658.html
●「難消化性デキストリンの特性と用途」独立行政法人農畜産業振興機構
https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000547.html
●『日本人の食事摂取基準(2020年版)』厚生労働省1-4炭水化物
●令和元年国民健康・栄養調査P30
https://www.mhlw.go.jp/content/000711006.pdf
●日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
●農林水産省HP「実践食育ナビ・日本型食生活のすすめ」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/style.html
●「食物繊維」厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html